洲珠乃日記(すずない)

気ままな更新とサイドカーやゲームのブログ

古代マケドニア軍の戦い方を考えてみる

これは個人的な解釈も非常に含まれています。
さて、マケドニア軍の戦い方ですがこれについては似た内容を既にマケドン会長がアップしておられますが・・・まぁ書いていこうかと思います。

現状ではマケドニア軍の部隊紹介をしていないので私が書きたいこと全てが書けるかは謎ですが、それら部隊の説明も含めて記載していこうかと思います。


マケドニア密集方陣とサリッサについて
まずサリッサについて説明すると、サリッサはアレクサンドロス大王の父フィリッポス2世が採用した非常に長い槍になります。これは非常に有名で小・中・高の学校教科書にも掲載されていることが多いでしょう。ギリシア式よりもマケドニア式の方が学校の教科書では良く見かけました。このサリッサはバルカン地方の流れを汲んだ武器と考えられており、もっとも長かったもので12キュービット(約5.5m)もあったと伝えられています。もっともこれはディアドコイ中のサリッサとも考えられ、創意工夫をして結局ローマ軍と戦う時には戻っていたとされるのでこの長さはアレクサンドロスやフィリッポスが採用した長さとは違うのかもしれません。なんにしても5.5mの槍など想像がつきにくいでしょうが、どこかのホームセンターにでも行けば物干し竿や建材などでそれぐらいの長さの棒を見つけれると思います。が、その前にこのサリッサは真ん中の辺りで金属のパイプに二本の棒を差すことで長さを延長していた。このくっつけている部分の構造は分からないが、再現された絵やCGなどをみると掃除機の延長パイプに似ている気がする。伸ばすという目的も同じだしね。行軍時にはサリッサを分解されて短くして持ち運び戦闘前につなぎ合わせた。サリッサの槍先も敵に更に届くように考えたのかギリシア諸国が使用したドリュ(槍)とは違って先端部分の形状が長くなっている。またサリッサの一番後ろには青銅の石突があったと考えられているが、何時から採用されていたのかは謎だ。マケドニアの密集歩兵はこの様に長い槍サリッサを持って戦場に赴いた。彼らの隊形は非常に独特で、戦闘行軍中は槍を上に向けて歩き、戦闘直前になってから槍を下ろしたのではないかと考えられている。この様に上に向いた槍を少し振り回すことで遥か上空にある槍が揺れて敵の矢を弾き落としたとされ、これには彼らの装備が関係しているようにも思われる。というのは彼らはこの様に長い槍を装備したことで機動性が非常に低かったのではないかと考えることが出来る。また、常に同じ類の装備を着けていた訳ではないことも記録に残っており、状況に応じて変わったことを示しているが、彼らの機動性を上げるために防具などの軽量化を行っていたため古来より装備されていた青銅製の鎧に身を包んでおらず矢の攻撃を積極的に防ぐ方法を考えついたのではないかと私は考える。もしかしたら何処かの民族がこの方法を行っていたのを真似したのかもしれない。ともかくも彼ら密集方陣を構成する部隊をペゼタイロイと呼ばれたが、これは精鋭部隊で実際にはもっと多数の部隊が存在したと思われるが、それらの分類は兵士の出身地によって別けられていた様だ。(この辺りはRome:Total warのEuropa Barbarorumで登場するペゼタイロイ以外のファランクス陣形が可能な長槍部隊から想像しやすいだろう)また、これは今だ解明されていないが、密集歩兵にどのような間隔で配置されていたかは不明だが軽装歩兵が混ざっていたのではないかと考えられている。これには私も同意であり、彼らによる働きなくしてサリッサを持った部隊を効果的に運用できたとは考えられないからだ。

●密集長槍部隊の運用について
上記の最後に記載したことを私が書くためにはまず密集長槍部隊をどのように運用したかを先に記載する必要がある。まず、彼ら密集長槍部隊がどれぐらい有効性ある部隊であったかを考える必要がある。というのはゲームのように先っちょが当たっただけでどんどん殺していくような部隊だとは非常に考えにくいからだ。彼らは濁流のような敵の攻撃を受け止めて牽制するのが基本的な任務だったと考えられる。ハリネズミのように突き出た槍によって敵に恐怖心を抱かせ、接近出来たとしてもこれらを上に記載した軽装歩兵や一部の部隊が防いだのではないかと私は考えている。また、彼らは接近戦用に剣を装備していたと考えられ、危ない場合にはサリッサを捨てて剣で対応出来たのではないだろうか。彼らはその長い槍によって敵兵を串刺しにし、あるいは切り傷などを負わせ、また無数の穂先で恐怖を植えつけて敵の攻撃意思を鈍らせ牽制したと考えられないだろうか。彼らが何故この様に敵を牽制しなければならなかったのかについては、次の騎兵と軽装歩兵の項目で説明する。

●サリッサの効果
上にサリッサは敵を牽制するために使用したと私は記載したが、サリッサそのものの殺傷能力について少し考えてみたいと思う。まず、当時のギリシア軍の軍装がこのサリッサの効力を発揮した原因ではないかと思われる。これは当時ホプリテス(重装歩兵)の装備が非常に軽装であった点から考えられる事で、ギリシア軍は既にホプリテスの機動性の無さには気づいており、その為青銅製装備を一部防御範囲を減らしたり麻や革の防具に変えて軽量化したりしていた。これはペロポネソス戦争後に軽量化されたようである。この為金属製装備では槍の攻撃を弾けたのかもしれないが、既にその防具はなく被害を出した可能性がある。これは特に東方ペルシアの傭兵として雇われていたギリシア人部隊に見られ、彼らは伝統的なスパルタ式の装備をしていたとされ、その装備は青銅の盾と兜、剣や槍を装備していた。服は赤いエクソミスを着ていたとされ、赤い理由は分からないがスパルタの赤いマントが血の色と同じ赤は敵を威嚇し、怪我を負っても血が目立たず軍務に適している為とされ、これと同じ理由かもしれない。マントと違って服なのでその意味は更に強いように思われる。この様に軽装備の敵に対しては効果を発揮したと思われるが、マケドニア軍に敗北したカイロネイアの戦いのあとにアテナイのリュクルゴスによって軍制改革が実行されており、その装備は古式の重装歩兵装備を当時風に復活させている事から考えられる点である。(しかし彼が昔アテナイが目指した理想を再現しようとしていた一種の復古主義的な面を持っている事も含まれているかもしれないが)いずれにしても装備が改良され、ディアドコイ後のギリシア世界がマケドニアの属領から離脱し続けていた事を見るにこの様な装備の重装化は成功したのだろう。


■騎兵の運用について
騎兵は大きく別けて3つの部隊が存在した。一つはヘタイロイと呼ばれるマケドニア貴族によって構成された部隊と、テッサリア傭兵騎兵、それ以外の騎兵部隊である。特にマケドニアは隣がトラキアやスキタイといった騎馬に長けた民族が近くにいたためそれらの部隊を多用したと思われ、更にギリシアの中でも騎兵が優れているとされていたテッサリア地方の騎兵部隊を傭兵として雇っていた。さて彼らの役割だが、これは先ほどの密集長槍歩兵が敵を牽制している間に騎兵が背後や側面に回って敵を攻撃したと考えるためで、これはカイロネイアの戦いが示していると考えられる。この戦い方は後のハンニバルも騎兵を使って側背攻撃をしている点でも参考にしやすいと思う。スキタイの馬はペルシア征服後に鹵獲したものを本国に送っていることでスキタイ馬が研究、繁殖させるに値する優れた馬であったことを示している。

補足
側背攻撃とここで書いたが、側面の攻撃はともかく背後からの攻撃は殆ど行われていない。ここで私が書いた背の攻撃とは後方にある輜重部隊や陣地に対する奇襲的な攻撃を指し、また後方にあって指揮を行っている敵将に対しての直接攻撃もこの背攻撃に含まれる。かなり広義になってしまうなぁ;


■ヒュパスピスタイについて
彼らは楯持ちといわれる軽装の部隊で精鋭部隊でもある。彼らの事はあまり詳しく分かっていないが、トゥレオフォロイなどのようにその機動性を生かした戦い方があげられる。だが、彼らの一番の任務は牽制や陽動によって出来た空間に侵入して側背攻撃を行おうとする騎兵部隊の直接援護だった。彼らは騎兵部隊が進むとそれに従って騎兵を守るために展開され、アレクサンドロス大王を命がけで守る楯持ちの兵士がいたがそれもヒュパスピスタイであったとされる。この様に騎兵を援護するために非常に軽量だが歩兵部隊一番の精鋭として彼らは必要不可欠な存在だった。彼らは騎兵を攻撃しようとする敵に対して攻撃を仕掛けたり道を遮断して妨害して騎兵の進撃を助けた。


■軽装歩兵について
彼らの記録があまり無いためよく分からない点が多い部隊でもある。彼らはギリシア諸国の軽装歩兵と同様に味方部隊に敵が接触する前に間接攻撃などを行って敵に混乱を発生させることが主任務だと考えられるが、彼らは初めに攻撃したらその後どこにいるのかさっぱり分からない。だが私個人としては後方へ撤退したのではなく味方の部隊の中に紛れ込んで落穂拾いの役目を果たしたのではないだろうか。必要であれば部隊の中から間接攻撃を続けることが出来るし、危なくなった味方を剣や槍によって助けたり後方へ運んだりするのに活躍したのではないだろうか。


■まとめ
だらだらと書いてきたが、簡単にまとめると

歩兵部隊が敵を受け止める

受け止めている間に騎兵が両翼か片翼から敵の背後に侵入する

進入した騎兵は敵の本体か歩兵部隊を攻撃している部隊に向かって攻撃を仕掛ける

不意や側背を攻撃された敵は動揺して敗走を始める


この流れではないだろうか。



勢いで書いてしまったがまだ資料を読んでる段階のまとめ程度で書いたので後日変更するかもしれないが、Total Warをプレイしていて余計にそう感じたのだけどどうなんだろうね。